かもしれない経営・だろう経営 その2

こんにちは。フェニックス経営研究所 加賀城です。

皆さん、競馬競輪などのたぐいのことをしたことはありますか。

私は、会社員なりたての頃に競馬をしたことはありますが、それ以降馬券は20年以上買っていないです。たしか一番最初は中山競馬場でした。船橋法典の駅から地下道を通って、坂を上った先にある芝生と観客席。競馬場って異様に大きいなあ。そして、駆け抜けるサラブレッドたちの生の足音に感動した覚えがあります。

その日は土曜でした。メインレースに私はお金をかけたのですが、残念ながらビギナーズラックは来ませんでした。そうしましたら同行した親友が「最後、勝負するからな」といって、馬券売り場に消えていくのです。

「え、まだレースあるの?」

中央競馬は一般的に1日12レース開催されます。そして通常は第11レースがメイン競争、つまり勝馬投票券の売れ行きがその日の中で最も高いレースです。

中央競馬はそのメインレースの後にもう一レース、最終レースとして開催するのです。

なぜ?

一つは、混雑を避けるためです。中央競馬は本場であれば、大レースがなくても1-2万人は来場するので、メインレースを最終レースにすると、電車や通路が大混雑するので、その防止という非常に大きな意味があるのです。

私は「謎の12レース」と呼んでいたのですが、親友が

「今日もメインで大負けしたから、最後取り戻さなきゃやってられん!」

「終わりよければすべてよし!だな」

と言っているのを聞いてもう一つの本当の意味を理解しました。

それは人間の何とか勝ちたい、これまでの掛けのマイナス分を抱えたまま今日を終えたくない、最後なんとか勝って帰りたい!という人間の心理を突いた、JRAにすればもう一儲けできる、ということに気づきました。

そして、メインで金銭感覚がバグっている人間にとって、多少追加で投票したとしても「誤差」としてとらえる、こんな意味からも

謎の12レースではなく、魔の12レースだったのです。

さて、創業や新規事業をする際、競馬などギャンブルと同じとは言いませんが、事業が成功することを確信して計画をたて、事業を作っていきます。

経営は水物。これは経営者に異論はないはずです。100%自分の予想通りの社会状況になるとは限りません。それは、2019年に飲食で開業された方であれば経験されている通りだと思います。嘘だろう、と思っても開業間もない状況では何もできないです。もちろん、持ち帰り専門店など業態を変えて持ちこたえる、あるいはパネルを導入して補助金もこまめにチェックして、最小限の傷で回復した方もいらっしゃいます。

さて、今日のテーマです。創業者の方や新規事業、新規市場に取り組まれる方にぜひ考えて頂きたいのは、「一時撤退のライン」をきちんと設定する、ということです。

必ずうまくいくという確信の元、事業を開始してもうまくいかないとき、なんとか立て直そうと思って、自社自分の店舗でできる改善をしていきます。メニューを改善する、お得な価格を設ける、集客の方法を変える、SNSの方法を変える、法人取引に取り組み始める・・・などの改善策です。

しかしながらこれまでの投資が大きい場合、必ず投資対効果に対する認識がバグります。あともう少し、次は必ず・・・

何の対策も立てずに・・・なんの見直しもせずに・・・お客様のニーズがどんどん変わっているのに・・・

すでに先が見通せなくなっているのですが、今までかけてきた労力、資金、商品への思い、自社の夢などなど。手放すには勇気がいるので、「一時撤退のライン」を決めておかなければいけません。

例えば、「2年目売上が想定の50%を切った月が半年連続」+「役員借入が○○万円を超えている」などです。すでに「自社の改善」ではどうしようもない、という事実をまず理解し、もう1Rではない状況と理解します。抜本的な改善が必要なので、営業をそのまま続けることは厳しい、ときちんと判断するのです。

まさに魔の12レースに行きそうなとき、を判断し、その前で余計な支出を止めることで、失敗が致命傷になったり回復に大きな時間的不利益が発生することを防ぎます。

ここから独断と偏見ですが、一流経営者とプロギャンブラーは一時撤退、つまり損切がうまいと思っています。経営者は新しい事業の成功率は1/10と体感的に知っていますので、その確率を少しでも高める、低い要素が出たらためらわずに撤退して、やり直し!を選びます。

ギャンブラーは波に乗れない時には、何か状況が変わったんじゃないか。競馬でいうと、調教法・馬場・賞金の変化・厩舎や騎手・番組の改訂など、レース単体では時の運ですが、長い期間の勝負でいうと大きい傾向を抑えているかどうか、という勝負ではあるので、そこを見極める「見」を大事にするといいます。

人間は成功体験が自信になります。

会社を辞めて、家族を説得して、独立した。これも成功体験です。そして、独り立ちしてその事業で生活できるようになると、その自信が強くなります。そうして経営者としての顔、ふるまいになってきて、事業をやるから事業をつくるに変わっていくのです。

ですが、過信につながることもあります。簡単に言うと見通しが甘くなるのです。この怖さを本当の成功者は知っているので、未来に対する大きな挑戦を推奨しても、無謀なことはやりません。失敗がわかっていることをやらない。成功の可能性を見極めて集中的に攻撃する。そうした心掛けが欲しいですね。

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